砂漠の高級ホテルでボランティアしておりますわ

無事、チリの外国人証明書を申請することができたものの、
またさらにそこから1か月間、発行に時間がかかると判明したため、
今だ働くことができない、外国人の無職。

せっかく遠路はるばるイキケという街にきたし、サンティアゴに帰っても仕方がないので、
イキケの中心地からバスで1時間ほどにある砂漠のホテルのボランティアに応募した。

ボランティアというものは、
1か月間寝床と食べ物が約束されているので、
残高が少なく、このままでは真剣に1年も持たずに日本に強制送還されるかもしれない恐怖と戦っている無職の外国人にとってありがたいツールである。

しかしながら前回のボランティア先で、
寝床と食べ物に関して相当痛い思いをして、
金輪際ボランティアはやらずに、真面目に働くことを誓った身からすると、
非常に気の重い選択ではあった。

されど背に腹は代えられぬ。

仕事をせずに旅をするとなると、1週間の宿代は、2万円前後もするし、
飯も自炊するにせよ日本のスーパーより少し高いくらいの物価のため、
1か月の生活費の計算は10万前後は行く…。(チリの物価は本当に高い)

したがって、ボランティアを再びすることに決めたのだ。

ボランティア先のホテル名は、【Tantakuy Eco Experience】

まさに砂漠のオアシスともいうべき、砂漠のど真ん中に位置する、高級ホテルだ。

正直、俺が働いていたホテルにもあってもそん色ないくらい、ハード面がしっかりしている。
だだっ広い敷地に、ヨガや瞑想ができる洒落たスペースがあり、小さなライブ会場もある。
客室は一つ一つ離れになっており、ホテルの真ん中にはプールもある。

とても綺麗なホテルだった。

前回行ったボランティア先で最初に通された場所は、
乱雑に散らかっており、カビや獣臭が混ざった臭いが充満していて、
まさか自分がここで1か月寝食をするとは思わなかったことと比べれば、
ファーストインプレッションは段違いであった。

また、案内された俺の寝床も、ベッドと百均くらいの質の衣服入れがあるだけの簡素な部屋だったが、
清潔でしかも一人部屋だった。(部屋にベッドが2台あり、俺以外ボランティアはいないらしいからもしかしたらこの先相部屋になる可能性はある)

到着して荷ほどきもそこそこにすぐに昼飯が提供された。

このホテルのシェフが作ったまかないらしいが、それがまた旨かった。

米とシチューのようなもので、味付けのセンスもさすがだった。(作ったのがペルー人と聞くとなるほど納得した。日本ではあまり知られていないが、ペルーは美食の国として世界中で有名である)

翌日からボランティアの仕事が始まった。

俺の仕事は、ホテル従業員用のまかないを作る料理人の補助だ。

まかないといっても、全部で15人くらいいるスタッフのまかないを作るわけだから、だいぶ負荷の」かかる仕事ではある。

俺の役割は、野菜をみじん切りにしたり、使い終わった料理器具を洗ったり・・・

料理人は40代ぐらいのペルー人男性(ロベルト)と27歳のチリ人男性(フェルナンド)。

日本では、料理人と言えばなんかこわいイメージがあるが、2人とも本当にいい人で、すごく気遣ってくれる。

ロベルトの方は、初日「お前は肉は食えるのか?」【おそらくビーガンかどうかの確認。南米ではことあるごとにビーガンの確認がある。】
と例のごとく尋ねられたので、「俺はなんでも食うぞ」というと、「てことは蜘蛛も食えるんだな」というユーモアのセンスも持ち合わせる、ジョーク好きの気の良いおっさんだ。

15人くらいいるスタッフの半分以上はホテル敷地内の寮に住んでいるから、みんな家族みたいな雰囲気がある。

俺とすれ違うとみんな、「おい、元気か?HATO」と声をかけてくれる。

もう何回もこんな風に挨拶してくれているのに、毎回とてもうれしい気分になる。

異国の地で、異国の人たちの仲間に入れてもらえた感覚がある。
しかも初日から。

俺が南米に来た理由の一つに、【南米人の仕事の取り組み方について学ぶ】

という大きなテーマがある。

ここのホテルのスタッフたちの働きぶりは驚かされる。

めちゃくちゃ働いている。少し前まで俺もめちゃくちゃ働いていたけど、それと比べても同じくらい長時間働いている。

でもなんか生き生きしている。

嫌そうに働いている感じがないというか、家族の一員として、
自分の役割を精一杯こなしている感じがはたから見ていると感じる。

俺が働いていたあの日本の職場環境と、ここの職場環境が同じではないから比較なんてできないけど、

俺が求めていた、【南米人の仕事の取り組み方について学ぶ】について

深く考えられる最高の環境に今いるかもしれない。

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