祝日が重なり、仕事が4連休になった。
正直、2か月前にバルディビアというところに1週間ほど旅をしていたので、
旅には行きたくなかった
貧乏人の貧乏旅行は、体力的にも精神的にも疲れるからである。
というと、周りからは、そんな環境を羨ましがられたり、何かっこつけてんだとか思われそうだから、
一応弁明しておきたい。
こうしてチリで1年間生活している現状がもう俺にとって旅行なのだ。
常に頭の中は、旅行モードだ。
家に帰ったって、本当の意味で安らぎは無い。
土足はいまだにむかつく文化であるし、
同居人のおっさんはなんか好きになれない。週末は彼女のババアを連れてきて、ずっと喋って目障りだ。
もう1年もゆっくり湯船につかっていない。
日本米が恋しい。
街の外に一歩踏み出せば人種の入り乱れた人々とすれ違い、
訳の分からない言語が頭の上を漂う。
建物も景色も日本のそれとは一線を画す。
信号機は役立たずで、ぼお~と歩いていた日には車に引かれてあの世行きだ。
乞食に絡まれれば、丁重に施しを辞退しなくてはならない。(来た当初は無視していたが、チリ人はみんな驚くほど丁重に断っていたので、俺も見習うことにした。なるほど、おそらくは雑に扱うと後でなにをされるか分からない為の自己防衛だと解釈している)
こんな感じで、常に旅行モードのスイッチがOFFにならない環境のため、
4連休あったところで、
じゃあ旅にでも出ようかねなんていう風の吹き回しはなかなか巡ってこないのである
それに金銭面に関しても、どうしても心もとない。
月の給料で、1ヶ月生きていくのに精一杯で、貯金を作る余裕は雀の涙ほども捻出することは難しい。(ちなみにチリ人は貯金の文化がないらしい。どういう意味だろう?俺も分からない)
だから旅に行く気はさらさらなかったのだが、
その4連休中2日ほど、遊びの予定を入れていたのだが、見事に4連休直前にドタキャンの憂き目にあったと来たら、
これはもう旅をするしか選択肢はないなと、腹を決めて、重い腰を上げたのだった。
まったくチリ人(一括りにする言い方は嫌いなので、俺の周りのチリ人と解釈願いたい)というのはドタキャン好きな国民性である。
感覚的には、50パーセントの確率で約束が成立すればいい方である。
今回のドタキャン理由は、
中心街でデモがあって、治安の悪化や、交通機関がマヒする恐れがあるから会うのは止めておこうということらしかった。
そしてこのことを前日に突如として言い渡された。
デモなら仕方ないかもしれないが、前日は無いだろう?
塵(チリ)が積もって怒りが爆発した。
チリ人(俺の周りの)は何もわかっていない!!!!!
俺(チリにおける外国人)は2つ目、3つ目のプランは用意されていないのである。
そうか、じゃあ会うのは無理だね、じゃあ1人でサウナでも行くかなとか、
久しぶりに家族と会うかとか、
じゃあ近所の友達と遊ぶかとか、
やり残したテレビゲームを家に帰ってのんびり進めるか、のような、
他の選択肢はないのである。(前出の週末ババアも大いなる懸念点)
第2、第3のプランがすぐに組み立てられない外国人の俺(友達のいない自分のせいでもある)にとって、
ドタキャンは死活問題なのだ。
時間は有限である。これには国民性とかは関係ない。同じ人間なのだから。
ドタキャン=外国人の俺にとっては時間の無駄でしかない。
このことをチリ人(俺の周りの)諸君には十分に留意していただきたい。
愚痴に熱くなってしまって失敬、
旅の話に戻そう。
実は次旅に行くとしたらと考えていた候補地が2つほどあった。
1つはチリのリゾート地、ラ・セレナという場所。
もう1つが、アルゼンチンのメンドーサという場所であった。
この2つならどっちがいいかと、駐在している日本人仲間や、現地チリ人に聞いてみると、
その二択なら満場一致で、メンドーサだった。
チリに飽きた日本人ならともかく、
チリ人のお前らまでメンドーサを推すのかと、唖然としたが、まあ1年間チリ国内を巡ってきた俺なら
なんとなく理解はできる。
チリは間違いなく観光資源の優れた国ではあるが、
その土地を活かすセンスがなさすぎる。
どうせまた同じ街の顔色なんでしょと思ったら、ラ・セレナも大して興味はそそられなくなっていった。
だから前々から気になっていた、アルゼンチンのメンドーサに行くことにした。
メンドーサは俺の住んでいる、チリのサンティアゴからバスで8時間ほどである。
サンティアゴ市街地から毎日見ていた6000~7000メートル級のアンデス山脈を越えた先の景色を、ぜひ一度拝んでみたいと、
常日頃から思っていたのだ。